野球で上達する選手は、目標の立て方が違います。結果目標・パフォーマンス目標・プロセス目標の3種類と、目標設定シートの書き方を、スポーツ心理学の研究をもとに解説します。
この記事でわかること
- 曖昧な目標より「具体的で少し難しい目標」が上達につながる理由
- 結果・パフォーマンス・プロセスの3種類の目標の違い
- 3つの目標をつなげる目標設定シートの書き方
「レギュラーになる」「県大会でベスト4」。目標を立てること自体は、多くの選手がやっています。それでも、目標を立てたのに毎日の練習が変わらない、ということはよくあります。
その原因は、目標の「種類」が1つしかないことにあるかもしれません。この記事では、スポーツ心理学で使われる3種類の目標と、その組み合わせ方を紹介します。
筆者のチームでの取り組み
私が指導している中学校の野球部では、選手一人ひとりに長期目標と、そこに向けた短期目標、そしてプレー目標を立ててもらっています。
毎週、手づくりの「週間ノート」をプリントして配り、土日の練習で「今週の短期目標はクリアできたか」「長期目標にどれだけ近づけたか」を一緒に確認しています。この記事では、こうした目標設定の土台にある考え方を紹介します。
なぜ目標設定で上達するのか
目標設定の研究では、「ベストを尽くす」のような曖昧な目標よりも、具体的で、少し難しい目標の方が成果が上がりやすいことがくり返し確かめられています。
具体的な目標があると、
- 何に注意を向ければいいかがはっきりする
- 努力の量が増える
- あきらめずに続けやすくなる
- やり方を工夫するようになる
といった効果が生まれると考えられています。逆に言えば、目標が曖昧なままだと、練習も「なんとなく」になりやすいということです。
目標には3つの種類がある
1. 結果目標
試合の勝ち負けや順位など、結果に関する目標です。
例:「夏の大会でベスト8」「レギュラーをとる」
結果目標はモチベーションを高めてくれますが、相手や運にも左右されるため、自分だけではコントロールできません。
2. パフォーマンス目標
相手に関係なく、自分の成績や数値に関する目標です。
例:「打率3割」「四球を1試合2個以下にする」「遠投80m」
自分の伸びを測るものさしになります。
3. プロセス目標
プレー中に自分がとる行動ややり方に関する目標です。
例:「打席では低めのボール球を振らない」「投げ終わりまで体の軸をぶらさない」
プロセス目標は、その場で100%自分でコントロールできるのが特徴です。ゴルフ選手を対象にした研究では、プロセス目標を使ったグループで、技術の向上に加えて自信や集中の面でも良い変化が見られたと報告されています。
| 種類 | 例 | 自分で決められるか |
|---|---|---|
| 結果目標 | 県大会ベスト4 | 決められない |
| パフォーマンス目標 | 打率3割 | ある程度 |
| プロセス目標 | 低めを振らない | 決められる |
3つの目標をつなげるのがコツ
いちばん効果的なのは、3種類の目標を「はしご」のようにつなげることです。
例:内野手Aくんの目標
- 結果目標:秋の新人戦でレギュラーをとる
- パフォーマンス目標:練習試合でのエラーを1試合1個以下にする
- プロセス目標:ゴロは必ず正面に入り、捕る前に足を止める
こうすると、「レギュラーになりたい」という大きな気持ちが、「今日のノックで何をするか」という具体的な行動にまでつながります。試合中は結果ではなくプロセス目標だけを考えるようにすると、前の記事で紹介した緊張対策にもなります。
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手順
- 結果目標を1つ書く(期限も入れる。例:来年7月の大会まで)
- 結果目標を達成するために必要な数字を考える(パフォーマンス目標)
- その数字を出すために、毎日の練習でやる行動を2〜3個に絞る(プロセス目標)
- 振り返りの日を決める(例:毎週日曜日に5分)
よくある失敗
- 目標が多すぎる:プロセス目標は2〜3個まで。多いと結局どれもやらなくなります
- 難しすぎる、簡単すぎる:「がんばれば届く」くらいの難しさが理想です
- 書いて終わり:週に1回は見直し、達成できたら次の段階に更新しましょう
まとめ
- 具体的で少し難しい目標の方が、上達につながりやすい
- 目標には「結果」「パフォーマンス」「プロセス」の3種類がある
- 3つをはしごのようにつなげると、毎日の練習が変わる
- プロセス目標は2〜3個に絞り、週に1回振り返る
指導者の方は、選手に目標を「書かせる」だけでなく、週に一度、プロセス目標ができたかを一緒に確認する時間をつくってみてください。私のチームのように、1枚の週間ノートを配って週末に振り返るだけでも、目標が「書いて終わり」になるのを防げます。
参考文献
- Locke, E. A., & Latham, G. P. (2002). Building a practically useful theory of goal setting and task motivation: A 35-year odyssey. American Psychologist, 57(9), 705–717.
- Kingston, K. M., & Hardy, L. (1997). Effects of different types of goals on processes that support performance. The Sport Psychologist, 11(3), 277–293.