試合のメンタル

野球の試合で緊張しすぎる時の対処法|スポーツ心理学でわかる「ちょうどいい緊張」のつくり方

公開 約5分で読めます文:SEYWO

試合になると手が震える、普段どおり投げられない。そんな「あがり」に悩む野球選手に向けて、緊張のしくみと、呼吸・ルーティン・考え方の3つの対処法をスポーツ心理学の研究からわかりやすく解説します。

この記事でわかること

  • 緊張は「なくす」より「ちょうどいい強さに調整する」もの
  • 吐く時間を長くする呼吸で、強すぎる緊張を下げる方法
  • 10秒以内で終わるプレー前ルーティンのつくり方

「練習ではストライクが入るのに、試合になると腕が縮こまる」「打席に入ると心臓の音が聞こえる」。野球をしていると、誰でも一度はこうした経験があるはずです。

先に結論を書くと、緊張はなくすものではなく、ちょうどいい強さに調整するものです。この記事では、緊張のしくみと、今日から使える3つの調整法を紹介します。

筆者の経験

私自身、「今、評価されている」と感じた瞬間に緊張して、手が震えてしまうタイプです。こうした緊張は「あがり」とも呼ばれ、程度の差はあれ誰にでも起こるものだと思います。指導者として選手を見ていても、真面目で一生懸命な選手ほど、あがりに陥りやすいと感じています。

だからこそ、緊張を根性で押さえこむのではなく、いつも通りのプレーをするための知識を届けたい。それがこの記事を書いた理由です。

緊張は「悪者」ではない

緊張は体の準備運動

緊張すると、心拍数が上がり、呼吸が速くなり、筋肉に力が入ります。これは体が「これから大事な場面だ」と判断し、すぐ動けるように準備している状態です。つまり緊張そのものは、体がサボっていない証拠でもあります。

強すぎても弱すぎても力は出ない

心理学では古くから、緊張(覚醒)の強さとパフォーマンスの関係は逆U字型になると考えられてきました。まったく緊張していないと集中できず、緊張しすぎると動きが硬くなる。その間に、いちばん力が出る「ちょうどいいゾーン」があるという考え方です。

さらに、このちょうどいい強さは人によって違うことも指摘されています。少し気持ちが高ぶっている方が打てる選手もいれば、落ち着いている方が良い選手もいます。大切なのは、平均ではなく「自分のゾーン」を知ることです。

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ポイント

緊張を「ゼロにする」ことを目標にすると、かえって緊張している自分を責めてしまいます。目標は「自分にとってちょうどいい強さに戻すこと」です。

対処法1:呼吸で体の緊張を下げる

緊張が強すぎるとき、いちばん手軽に使えるのが呼吸です。心の状態を直接変えるのは難しくても、呼吸は自分でコントロールできます。

やり方

  1. 鼻から4秒かけて息を吸う
  2. 口から6〜8秒かけて、細く長く息を吐く
  3. これを3回くり返す

ポイントは吸う時間より吐く時間を長くすることです。ゆっくり長く吐く呼吸は、体をリラックスさせる方向に働くとされています。

野球で使うタイミング

  • 打席に入る前、ネクストバッターズサークルで
  • ピンチでマウンドに立ったとき、プレートを外して
  • 守備で大きなミスをした直後

試合中にいきなりやっても効果は出にくいので、練習のときから同じタイミングで呼吸を入れておくのがコツです。

対処法2:プレー前のルーティンを決める

ルーティンとは

ルーティンとは、プレーの前に毎回同じ順番で行う動作や考えのことです。打席でバットを立てる、投球前にロジンを触るといった動作がこれにあたります。

スポーツ心理学の研究では、こうしたプレー前のルーティンが、集中を保ち、プレッシャー下でも動きを安定させる助けになることが報告されています。毎回同じ手順をふむことで、「いつもの自分」に戻るスイッチになるからです。

ルーティンのつくり方

要素 例(打者の場合)
体の動作 素振りを2回、ヘルメットのつばを触る
呼吸 打席の外で、長く吐く呼吸を1回
意識の焦点 「ボールを最後まで見る」など、1つだけ決める

ルーティンは長すぎると試合で使えません。10秒以内で終わる、シンプルなものにしましょう。そして試合だけでなく、練習の1球ごとに必ず行うことが大切です。

対処法3:緊張の受け止め方を変える

「緊張している=ダメ」ではない

同じドキドキでも、「やばい、緊張してる」と受け止めるか、「体が戦う準備をしている」と受け止めるかで、その後の動きは変わります。

緊張を感じたら、心の中でこう言いかえてみてください。

  • 「緊張してる」→「準備ができてきた」
  • 「失敗したらどうしよう」→「次の1球でやることは何か」

結果ではなく「やること」に意識を向ける

緊張が強くなるのは、多くの場合「打てなかったらどうしよう」と自分では決められない結果を考えているときです。意識を「低めを振らない」「腕を最後まで振る」など、自分で決められる行動に向けると、緊張は扱いやすくなります。

まとめ:緊張は調整できる

  • 緊張は体の準備であり、強すぎても弱すぎても力は出ない
  • ちょうどいい強さは人によって違う
  • 呼吸(長く吐く)で、強すぎる緊張を下げる
  • 10秒以内のルーティンで「いつもの自分」に戻る
  • 結果ではなく、自分で決められる行動に意識を向ける

まずは次の練習から、呼吸とルーティンを1球ごとに入れてみてください。試合で使えるようになるのは、練習で当たり前になってからです。

ご注意

緊張や不安が日常生活にまで強く影響している場合は、スポーツメンタルトレーニングの専門家や医療機関への相談をおすすめします。

参考文献

  • Yerkes, R. M., & Dodson, J. D. (1908). The relation of strength of stimulus to rapidity of habit-formation. Journal of Comparative Neurology and Psychology, 18, 459–482.
  • Hanin, Y. L. (Ed.). (2000). Emotions in Sport. Human Kinetics.
  • Cotterill, S. (2010). Pre-performance routines in sport: Current understanding and future directions. International Review of Sport and Exercise Psychology, 3(2), 132–153.